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「芋づる式、生化学の薀蓄」

情報洪水を乗り切るための「航海術」としての生化学

現代を生き抜くために必要な知識について

ここ何年かの間で、自己責任ということばがいろいろな分野で使われるようになってきています。年金、退職金の運用、住宅ローン、保険などなど。誰の人生にも身近なことの多くは、基本的にすべて自己責任で処することが求められています。しかしながら、これらのことがすべて簡単なことなのかと考えてみると実態は全く逆で、かなり積極的につっこんだ努力をしないと、自分にマッチした選択肢をつかむことができません。

現代をより首尾よく生き抜くためには、ある程度の専門的な知識が求められるようになっています。健康問題はもちろんのこととして、いろいろな意味において難しい時代であるといえるでしょう。

何が正しく、何が必要なのかがわかりにくい世の中

平均寿命が80歳代となってきた現代において、経済的に自立し心身ともに元気ですごすためには、従来にもまして、自己責任で補わなければいけない事柄が多くなっています。特に、健康問題というのは自分の体のことなので、「自分の体のことは自分がいちばんよくわかっている」といった感覚に陥りやすくなってしまいます。そのうえ、昨今の情報は百花繚乱の様相を呈していて、「何が正しいのか、何が自分にとって必要な情報なのか」ということが、かえってわかりにくくなっている面もあります。

情報を受け取る側の基礎知識の大切さ

例えば食や栄養、サプリメントや運動生活習慣病などについて考えるとき、情報を伝える側にも、それを受け取る側にもさまざまなレベルがあるにもかかわらず、それらを統合するしくみがほとんどないらしいことに、私はかなり問題を感じています。

ここでいう「さまざまなレベル」というのは、各人の健康状況にはいろいろあるといったことではありません。情報を発信する側にもその情報を受け取る消費者の側にも健康に関する基礎知識のレベルにはさまざまなものがあるにちがいない、そのような意味です。それは、個人個人において、経済的に安定するために必要な知識レベルがさまざまである、といったこととほぼ同じニュアンスであり、それぞれ(健康と経済)の重要な基礎知識は、基礎的な学校教育ではほとんど与えられないといった点において共通点があります。

けれども、そんなこと学校では教わらなかった、と開き直って得をするケースはほとんどありません。

情報洪水を乗り切るための「航海術」としての生化学、生理学の基礎知識

現代日本に氾濫する健康情報に流されず、自分にとって有用で科学的に正しい情報を取捨選択するために必要な基礎知識とは何であるか。それは、生化学と生理学の二つの分野だろう、と私は考えています。この二つの分野の知識体系を中心に、あらゆる生命科学的な応用分野、たとえば医学や栄養学、薬学、遺伝子工学などがつながっています。

それらの応用分野は、餅は餅屋として、それぞれの専門家に任せておけばよいでしょう。しかし、生化学と生理学については、私は住宅ローンにおける変動金利、固定金利、繰上げ返済といった程度の基礎知識として、日本人の常識となるように努力が傾けられてもよいものではないか、と思っています。

(2006年8月〜9月)

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「もっと複雑なことば」が市場で氾濫している

復習して損をしない学校知識

先日、当ブログで、健康や金融に関する基礎知識は学校では与えられない、と書きましたが、実際にはそうではありません。金融システムについてはともかく、生化学や生理学については小学校、中学校での理科、高校での生物や化学の時間に、実はかなりのところまでが教えられています。誤解を恐れずに言ってしまえば、ピタゴラスの定理や三角関数の公式、応仁の乱の登場人物などを記憶しているからといって、そのこと自体が人生で直接の役に立つことは、ふつうあまりないでしょう。しかし、からだのしくみや栄養素に関する知識などは、ある程度秩序立って理解することができれば、その人の健康という側面において、直接的かつ一生を通じて非常に役に立つことだと思っています。私は(私たち自身が生物である以上)、生物学的な知識については、誰もが復習をして損はしないものの代表格のように思います。平均寿命が80歳代の時代に入った世の中においては、とくにその傾向は強まるのだと思います。

中心となる基礎知識と応用

ものごとの理解には、基本となる事実や定義のようなものが真ん中にあって、それを元にして新しい知識や説、実用的な方法論が作られていきます。人体や食、健康に関して理解することもその典型的なもので、まずは中心的な知識をきっちりとおさえることが重要です。

金融のケースに例えて言えば、日銀の金利政策や為替、株式市場といった基礎知識もなしに、いきなり先物取引や不動産投資に手を出すことは非常に危険ですが、いわゆるダイエットと称して絶食や偏食、サプリメントの乱用に走ることは、これとまったくよく似ています。

悪意ある、あるいは無知な一部の業者が、善良な未経験者を相手に、社会的に問題のある勧誘合戦を繰り広げることの危険さにおいても同じです。

芋づる式の知識

たとえば、L-カルニチンとは何かを説明するとき、「遊離長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に運搬するために必要な分子」などということを私も普段言っていますが、「ミトコンドリアって何だ?」ということについての説明は省いてしまっています。細かく追求すればきりがないのも事実ですが、それでも「ミトコンドリア」というものには「細胞内小器官(オルガネラ)」という上位の概念があり、「核」「小胞体」「リボソーム」といった並列の概念があります。この中で、小胞体やリボソームはあまりこだわらなくてもよいのですが、「核」の中にはDNAが入っており、それイコール遺伝子であり、遺伝子には20種類のアミノ酸の配列順序が記されているという知識は憶えておかれたら色々なことの理解が楽になります。また、そこに記された配列順序に従って、アミノ酸が「ペプチド結合」という特徴的な結合で決まった個数だけつながり、何千種類といった多様な分子が出来上がること、その多様な分子こそがタンパク質である・・・・と、まあこういったことを健康問題やサプリメントに興味のある人々は、「芋づる式に暗記」しておいて損はないと思います。

なじみのあるコトバが知識としてつながることの妙味

前回、DNAに書き込まれた情報に基づいて、「20種類のアミノ酸」が「ペプチド結合」でつながって「タンパク質」ができる、ということを書きました。芋づる式の知識について、この例からはじめたのは、恐らく「アミノ酸」や「ペプチド」「タンパク質」といったコトバが、昨今サプリメントの世界では方々で毎日登場しており、どなたにとっても有名なことばだと思ったからです。

もう一つには、これらのコトバが個々バラバラなものであるどころか、相互に極めて密接に関係している、ということを示したかったからでもあります。しかし、これらのコトバは、燃焼系アミノ酸や分岐鎖アミノ酸、大豆ペプチドなどとして紹介されている以上、どんな関連でつながっているのかは、わからないようになってしまっています。これはとりもなおさず、コトバの一人歩きということだと思います。しかし、ひとたびその一人歩きがつながりをもって理解されれば、まさに目からウロコの連続になることうけあいです。

あきらめたくない理解のレベル

先に、私は、生化学と生理学の2つが、健康知識を読み解くための基礎知識の中心であると述べて、それに続けて「芋づる式の知識」の例を、アミノ酸やタンパク質のケースで説明してみました。実際、これらの分野における「芋づる式」はみごとなもので、アミノ酸・遺伝子・タンパク質など、どんなコトバからはじめても、全体として等価なストーリーを語ることのできるほど、論理的な知識の連環から成り立っています。今、これを読んでいらっしゃる読者の方には、そんなめんどうくさいものにつきあうのはごめんだ、と思われるかも知れず、また、「そんなことは専門家でない人間が知る必要もないという専門家」の方もあるかもしれませんが、私はそうは思いません。経済に例えて言えば、繰り上げ返済を検討し、長期金利の上昇傾向とともに、変動金利から固定金利に切り替え処理をするほどの人ならば、十分に理解できるレベルのことだと信じています。

有名なタンパク質

タンパク質は、20種類のアミノ酸がつながってできています。20種類のアミノ酸は、アルファベットあるいはひらがなの50音にあたるもので、その文字の配列によって無数の言葉や文章が作られるように、アミノ酸の配列によって、実にさまざまなタンパク質が作られます。卵の白身にはアルブミンというタンパク質が、筋肉にはコラーゲンというタンパク質が含まれています。卵の白身と筋肉ではずいぶん見てくれが異なりますが、「アミノ酸の語順」が異なれば、このように見かけも機能も違ってくるのです。我々の眼球には、ガラスのようなレンズがありますが、その透明なやや硬質の物体もやはりタンパク質でできており、クリスタリンという名前で呼ばれています。また、髪の毛や爪がタンパク質で出来ていることも、よく知られています。

気の遠くなるような多様性

しかし、タンパク質の多様性は、むしろ、抗体や酵素タンパクといった分子において、十全に発揮されます。抗体とよばれるタンパク質は、予測できないどんな形態の異物が体内に侵入してきた時でも、それにぴったりあてはまって無毒化できるように身体の中に「常にすでに用意されていて」、体中をパトロールしています。どんな形の病原体(ウイルスやバクテリアなど)が入ってきても、すべてそれにぴったりあてはまるものが予め用意されているなんてなかなか信じられませんが、そのしくみの本質的な謎を解いた利根川進博士はノーベル賞を受賞されました。後者の酵素タンパク質の方は何をしているのかというと、身体の中でおこる何千という化学反応の速度や方向を調節しているのです。その働きを「触媒作用」と言います。触媒というのは、ある物質Aから物質Bに変化するその反応を促進するもので、反応の前後でその触媒自身は変化しない、という特徴をもっています。

それで何が言いたいか、というと・・・

このあたりまで書いてくると、化学反応や触媒などのような別のことばがでてきますが、このブログでそのすべてについて今すぐに説明するつもりはありません。そういうと、「そんな手間のかかるめんどうくさそうな知識が、何で健康のためのみんなの常識になったりする必要があるのだ」、「そんなことはサプリメントの一般ユーザーが知る必要のないことだ」、というように思われるかもしれません。しかし、なぜ敢えて私がアミノ酸やペプチドの例を引き、生体化学反応の触媒たる酵素タンパクの多様性などについてお話したかというと、一つには、このような知識がやはり極めて基礎的で中心的な概念になるからです。

もう一つには、「実はもっと複雑なことばがすでに市場に氾濫している」ということが言いたかったからです。

もっと複雑なことばとは何かというと・・・・。

「もっと複雑なことば」の典型例

酵素タンパク(生体触媒)のことをEnzyme(エンザイム)といいます。そして多くの酵素タンパクはそれ自体では働くことができず、他の物質のサポートをうけて化学反応を進行させる仕事をしています。その「他の物質」こそが、ビタミンとか補酵素(コエンザイム)と呼ばれるものです。サプリメントの定番として筆頭に挙がるこれらの物質は、実のところ、生化学や生理学の分野では、かなり長い間基礎的な知識を積み重ねた上で登場する、相当ハイレベルな知識であるといえます。その他、活性酸素であるとか、オメガ3といった、健康食品の世界でその名前を聞かない日はないほど有名な述語の数々も、生化学や生理学の分野においては上級レベルに属します。

どこに問題があるか

健康食品の世界で、上級レベルの“ことば”が使用されている例を挙げてみます

「メタボリックシンドロームの予防という観点から、エネルギー代謝系のサプリメントであるCoQ10やL-カルニチンは」などの表現を使用した紹介文がよく見られます。そういう文章で使われていることばは、応用的に相当飛びぬけたレベルのフレーズであるという意味において、もっと咀嚼される必要があるのではないでしょうか。こういう問題こそ、専門家の助力が不可欠な部分ではないかと思います。

また、誤解を敢えてして解釈すると、学問的に確立された用語というよりは、暫定的世相的に提案されたキーワードといった方が適当なようなことばの数々があります。たとえばアンチエイジング、デトックスなどということばです。これらのことばが、伝統的な生化学や生理学の述語と同次元で使用されるとすれば、それ相応の混乱が起こってくるはずだ、というのが私の考えていることです。

(2006年9月〜10月)

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